は 悲しいから   嫌い。





























すぎた ―Spring which was too blue―


























今 別れの時 飛立とう 未来信じて


弾む若い力 信じて この広い この広い 大空に


















「卒業生、答辞…」






同じクラスの麻美ちゃんの答辞。
退屈だと思っていた毎日。
それでも終わるとなると少し寂しい今日。
三年間やりとおした部活。
推薦で決まった大学。
思い残すことはなにもない高校生活。
ここからじゃ、遠い、関西の大学。








思い出す小学校の卒業式。
「私達は今、中学校へと旅立とうとしています」、これは私のセリフ。
中学校で泣きながら歌った「旅立ちの日に」。
足元を見ると汚い上履き。
最後に洗ったの、いつだろう。
今日、ママ来てるはずだけど、どこにいるんだろう。






















「お前、泣いてんの?」














私の顔を覗き込み、小声で話し掛けてきた隣の宮本。
「泣いてないよ。」
「あ、本当だ。なんだ、泣いてるのかと思った。」
「私は泣かないよ。」
「え、どうして?」








「卒業生、着席!!」









体育の教員の号令。
答辞なんて聞いてなかった。
ごめん、麻美ちゃん。













「この後なんだっけ?」
「在校生の答辞。で、蛍の光。」
「あー、そっかそっか。」
「なんだ、宮本、早く終わりたいの?」
「いや、別にそういう意味じゃないんだけどさ、」





ひざにかかる少し汚れているスカート。
卒業式くらいクリーニングに出しとけばよかった。












私は この制服に ずっと 守られていた。












「宮本、胸の花、曲がってるよ。」
「え?まじで?直して、俺こういうの苦手なんだよなー」
「得意な男子もなんか嫌だなぁ…」
「そおか?ははっ、」
「はははは。」





















花 それは 儚く 美しいもの





























もう 戻らない 過ぎた日々 





















「卒業生退場!!」












蛍の光 在校生の拍手 吹奏楽の演奏 泣き出すクラスメイト 赤いじゅうたん

























は な れ た く な い

















「ほら、お前早く歩けって。」
「あ、うん。」
「ははは、何?やっぱり泣くの?」
「泣かないって。」
「本当か?ほら、後ろ詰まってる!」















背中を押されて 赤いじゅうたんの上を歩き出す。
どうして胸を張って、前を見て、歩けなかったんだろう。
下を向いて歩くと、涙がこぼれてしまうかも、しれないのに…。

















思い出になるには まだ 早すぎる





























「はははは、お前傑作!」
「そんなに笑うことないじゃん…。」
「だってうちのクラス、お前の前だけ超隙間空いてたじゃん。」
「だからあれは、」




「おい宮本!!後輩来てるぞ!!」
「さては俺のファンだな?おー!今行く!!」




「ばかじゃないの、そんな訳ないじゃん。」
「俺は人気者なんですー。ちょっくら行ってくるわ。」




























やめて
















そんな 顔で 笑わないで


























いつか枯れてしまうのだけが怖かった 











臆病者 私











花のように笑う 君





















「後輩さんは終わったの?」
「あー、あれあれ、2年生。なんかボタン強請られちゃったよ。」
「…ふーん。」
「あ、何、欲しかったの?俺の。」
「ばーか。」


























は な れ た く な い
















もっと もっと 心をつなぎとめておく 何かが 欲しかった















きっと 時が 人も 思いも 何もかも 変えてしまう


































お願い、どうでもいいなんて思わないで、


どうでも良くなるくらいなら、私を記憶から消し去って、


そして、どうでも良くなる前に、私の心を砕いてしまって、


君の事なんて忘れてしまうくらい、粉々に砕いて、


どうでもいいなんて思わないで、


それは、いじわるされるより、嫌われるよりも辛いこと、


離れていても寂しくないなんて言わないで、


私がいなくても大丈夫だなんて言わないで、


時がやってきて、流れていって、過ぎ去って、振り返って、


私はやがて君の中の「だった」になってしまう…

































「お前、部活に顔出すんだろ?」
「え、う、うん。」
「俺これで帰るからよ。」
「え?もう?」
「おー。今、バイトの店長が体調悪くて、代わりいねぇんだ。」
「そ、っか。」
「お前と友達になれてよかったよ。」
「な、何突然、」
「お前、関西で一人暮らしすんだろ?料理くらい、今のうちから練習しとけよ。」
「そんなの、言われなくても、分かってるよ」
「講義さぼんなよ?」




























やめて やめて やめて やめて


























優しくしないで 優しくしないで



























最後くらい 冷たくしてよ




























「関西行ったら舞妓さんによろしくな。」
「なんじゃ、そりゃ。」
「ははっ、じゃ、元気でな。」



























元、気で


























クラスメイトに挨拶して、卒業証書の筒を振りながら、教室を出て行った宮本。
離れてく、離れてく、


























は な れ て く 





















私は 今 どんな顔を している?


































「宮本!!!」






















飛び出した教室 いつもの教室 君と私の教室 もう来る事のない 教室






















「な、何?でかい声だして、」
「宮本も…専門学校頑張ってね。」
「お、おう。てか、それ言いにきたのか?」
「う、うん…。」
「ははは、ばかだなー。ま、お前らしいけどな。」
「……。」
「あ?泣く?泣く?」
「な、泣かないよ、何を期待してるの。」
「いやーお前の泣き顔見たかったなーって。」
「ばーか。バイト頑張れよ!!」
「おう!」
















君の笑顔 私の笑顔 二人の笑顔




















ずっと ずっと














すきだったよ













今でも



















もう見ることのない 制服姿の 君のその背中を しっかりと目に 焼き付けた


























廊下を曲がり 見えなくなった君の代わりに 流れてきた 涙 

























君の去った廊下と 今日一日分の 我慢していた 大粒の 涙
































君の前では 絶対に 泣かないって決めたんだ



























君の 記憶の中で いつでも 笑顔でいたいから









































は 笑顔 


























は    悲しい

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